貴族の、貴族による、貴族のための残酷劇
刀ステで知った演出家の末満さんの、他の舞台が観たいと思い行ってきました「グランギニョル」。
ちょうど、私の好きな役者さんも出るし、世界観もなんか好きそうな感じだし…と軽い気持ちで、本当に軽い気持ちで行ったんですけど、「すごいものを見せられた」というのが第一の感想でした(笑)
例えるならば、ジェットコースターでぐわんぐわん左右に揺らされてる感じです。
本作は2009年から展開しているTRUMPシリーズの最新作。
不死を失った吸血種(ヴァンプ)たちが永遠の命を持つとされる吸血種≪トランプ≫の不死伝説に翻弄されていく物語。
シリーズ作品も観ず、用語だけとりあえず頭に入れた状態で観に行ったのですが、単体作品としても十分楽しめます。し、きっとシリーズを観ている方は、もっと違った視点から観ることが出来るのではないかなぁと思います。
「吸血種」という言葉や、メインビジュアルからも分かるとおり、まず何をとっても「美しい」。
メインのお二人も本当に美しい。前々からその美しさは存じ上げていたけれど、世界観とよくマッチしていて本当に美しかったです。
特に三浦涼介さんは役柄としても貴族の振る舞いとしても、とても気高く、お辞儀1つにしても所作が素晴らしいなと思いました。
この作品における美しさって光り輝くような眩しい美しさではなく、陰鬱とした中で妖しく光るような美しさだと思っていて。いわゆる「耽美」「頽廃的」な世界観なんですね。
お芝居をする時に「美しいとはこういうもの」ってある程度、万人の共通イメージに嵌められるようなものだと表現しやすいんですけど、こういう美しさは一種、その人の「色気」や「狂気」から出てくるものだとも思っていたりします。
そういう世界観をしっかり生み出せる役者さんが揃っているってだけで、本当にすごいことだなーと感想をつらつら書きながら思っていたりします。
特に「この人すごい」って思ったのはキキ役の田村芽実さんとジャック役の服部武雄さん。
お二人以外のキャストさんも、もちろん素敵な方ばかりで圧倒されるばかりだったんですけど、特にこのお二人のお芝居に心惹かれました。
とにかく表現力が豊か。どちらも比較的明るいキャラクターということもあって表情も豊かなんですけど、観ている人をグッと惹きつける力を持っている方たちだなぁと思いました。
ああいう(と、観てない方には分かりづらいかと思いますが)、狂った役って個人的に難しいなって思ってるんです。
現実離れしすぎてて、逆にやりやすいって人もいるのかもしれませんが…。
そういう芝居が生き生きできる人に憧れている部分も大きいんですけどね。本当に魅力的でした。
さて、ストーリーに関してはパンフレットや公式サイトにもあるとおり。
今回のテーマは「呪い」。
人は誰しも自分が望んだ環境に生まれてくるわけではなく、生まれた場所で生きていかなければならない。それは生まれながらにして持っている「宿命」であったり「業」であったり、自分ではどうすることも出来ない、一種「呪い」のようなもの。
そういったことが本作の中心に描かれていて、その周りに「生と死」「愛と憎しみ」「希望と絶望」…様々な感情や出来事が散りばめられています。
それぞれの「呪い」に抗う者も、翻弄される者も、受け入れる者も、とても人間味がありました。
ヴァンプの少年・少女がある時期になると陥る「繭期」という症状も、人間の思春期に似たような症状で(度合は繭期の方が数倍は酷い)、繭期のヴァンプたちは持て余すほどの強烈な感情と葛藤しなければいけない。
一見ファンタジーの世界のお話として描かれていますが、それって私たち(人間)にもあることだと思うんですよ。抗いたくても抗えない何かだったり、苦悩の中でもがき苦しむ何かだったり…。そういうことも含め私たちに「何か」を語りかけてくれている作品なのではないかなと思っています。
残酷劇というだけあって、全体的にほの暗い雰囲気と内容ではあるんですけど、ちょくちょく入ってくる強烈なキャラクターとコミカルな部分に心救われつつ、「このドシリアスなシーンの直後にこれ持ってくるか!」と思わず突っ込みたくなるほど、感情があっち行ったり、こっち行ったりと大変忙しかったです(笑)
ノンストップ2時間半、本当に見応えがありすぎて、観終わった後、なかなか感情の整理がつかないくらいでした。とにかく結末が衝撃的すぎる。
クライマックスに近づくにつれ、鈍器で頭叩かれてる感じです(笑)
登場人物たちが残していった言葉たちを反芻しながら「あぁ、きっとあの言葉はあれなんだ」「あの人はこういう想いを持っていたんだろう」「あの時、あの子は何を思っていたんだろう」と、ただひたすらに、それだけを考えています。
ちなみに、本作のタイトルの元となったであろうフランス語の「グラン・ギニョール」は、パリに19世紀末から20世紀半ばまで存在した大衆芝居・見世物小屋のグラン・ギニョール劇場。そこから転じて同座や類似の劇場で演じられた「荒唐無稽な」、「血なまぐさい」芝居のことをいうそうです。(Wiki参照)
ありとあらゆるホラーをテーマにした作品を上演していたようなので、本作とリンクする部分もありますね。
<すごくどうでも良い経験者目線のコーナー>
・舞台美術の話
ステンドグラスの後ろに暖色系の明かりが仕込んであるんですけど、それがとても好きで!!!!分かりますか!!!笑
よく映画で夜の街を歩いている時に家の内側から明かりが漏れているようなシーンがあると思うんですけど、まさにそんな感じなんですよ。
ちょうど出捌けに使われている部分なので、その関係でも照明を置いてるのかもしれませんが、その細やかな演出が好きでした。
・照明の話
今回の舞台美術、大きなセットがベースにあって、シーンによってその他の小道具が追加されたりする形式だったんですけど、あれだけ色んな場面転換がある中で少ない小道具で表現しきれるのは、照明の力あってこそだと思うんです。
結構コロコロ変わるものだからオペレーション大変そうだなって思いました(完全なる裏方事情)
・音響の話
開演する時のきっかけ音に思わず「ビクッ」と身体が反応してしまうくらいにはすごかったです(笑)
客入れの時間帯からすでにお芝居の空間が出来ていて、開演が近づくにつれて、しっかりと音響で雰囲気が作られているのも良いなと思いました。
あと、どうかサントラをお恵みください。めっちゃ欲しいです。
<染さんの話>
あまりに本編を真面目に書きすぎたせいで、差し込めなかった染さんのお話(笑)
実は今回のお芝居、末満さんの脚本・演出ということ以外にも染さん(染谷俊之さん)が出演されるということもあって観に行ったんですけど、前回の義輝と言わずもがなまったく違う役柄で「あぁ、こういう役も出来るんだ」って、またグッと彼の世界に引き込まれました。
刀ステの初演で初めてお芝居を観て、個人的に「他のお芝居も観てみたいな」と思い、昨年・今年と色々観に行っています。
まだまだ彼の芝居は片手で数え切れるくらいしか観に行っていないので何とも言えなくて、「ここがすごい」「ここが良い」って明言するのが難しいんですけど、とにかく惹きつける力がある方だなぁと思うんですね。
※公式サイトより引用 ©WATANABE ENTERTAINMENT CO., LTD.
今回演じたダリという役柄は、物語の軸でもあり、外側は強く内側はとても繊細という難しい役どころでもあったと思うのですが、そこを演じきれるのがとにかくすごいと思いました。
ダリについては私の中でのダリ像がうまく落とし込めていなくて、「いや、そこはそうなのか?」「今のシーンのダリって何を思ってるの?」と色々と探ってしまう部分があったりするんですけどね(これ多分、役者や演出やってた時の癖)笑
次はどんなお芝居が観れるのかな~と、また他のお芝居への期待が高まりました!
色々書き連ねてはみたけれど、とにかくこの作品を語れるくらいの語彙力が欲しいと切実に思った夜です(語彙力検定2級保持とは…笑)。
0コメント